夏休み5日目 イツカ視点

 ・この村は水害から自らの住処を守るために【儀式】を用いて【神様】をつくっている。

 ・【神様】がいない状態でこの村は無事に夏を越すことができない。

 ・【神様】になると水害から村を守る以外にも特別な能力を手に入れることができるが、【儀式】を経て【神様】になると【欠落】が生じるため100%の力は発揮できない。

 ・うるるの母は前回の【神様】→その能力は『干渉(政治的だろうと自然的だろうとあらゆる事柄に干渉できる能力)』と『分配(自らの能力を他者(ただし限定的)に分け与える能力)』→『分配』で分け与えられた能力を【人間】が使うには代償として寿命を消費する。

 ・【神様】になると生涯村から出られない代わりにこの村での生活が保障される。

 ・【神様】の依り代に選ばれる条件は生まれつきの肺疾患により生じる【神様の器】を持って産まれること。→この村で産まれる新生児は前述の肺疾患を発症し【神様の器】を持って産まれることを望まれている。そのため疾患が出やすいように早産で産む風習がある。

 ・うるるは【神様の器】を持って産まれ、お母さんの次の【神様】になる予定だったが【神隠し】にあったため彼女に【儀式】は行われなかった。→うるるが神隠しにあったのは十年前、彼女が五歳の頃。→【神隠し】は慧念さんが原因?

 ・慧念さんも生然も、うるるに【神様】になってほしいと強く願っている。





 外から雷の音が聞こえる。今日は大雨が降ったからうるるの家での宿題はお休みになった。電話を寄越してくれたうるるの声は落ち込んでいて、私まで気が沈んで空を恨めしく思う。

 カーテンの閉め切られた自室で静かに机に向かうと手帳を開いた。そこには今日までに聞いたこの村の【神様】の総まとめが記されている。

 夏休み二日目に【神様】の話題が出てからずっと、私はそれを記録し、考えた。この村の【神様】に関する情報が手に入るのであれば内容はどんなものだって構わなかった。こんなものに本当は興味なんてないけれど、とにかくそれに関連する事柄を知る必要があったから。

 綴られた文章を反芻して、最後の記述まで目を通した私は文字の連なる手帳を閉じた。

 明日で夏休みは六日目に入る。もたもたしている時間はとうになく、これ以上準備に時間をかけてはいられない。【神様】の情報が集まって調子も戻ってきたのだから、いい加減行動するべきだろう。

 慧念さんの願いも生然の願いも申し分ないくらい強い。うるるだって、【神様】のことを信じてるって、好きだって、言ってくれた。だから、きっと――。

 また落雷が轟き、その轟音に急かされたみたいに雨が窓を叩く音がみるみる激しくなる。

 その勢いはまるで日に日に増したわたしの願いみたいだった。

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