スポットライトの当たらないヒロイン
舞台の上にはたくさんのヒロインがいる。けれど全てのヒロインにスポットライトが当たるわけではない。ライトにも観客にも限りがある。ヒロインに優劣はないけれど、ライトの当たる子、当たらない子、その差が存在する。どちらがより目立つかは明白で、私がどちらに属しているかも明白。最終的にガラスの靴を手に入れた子が正義の世界で、今日も私はそれを手に入れられず、いつも通りスポットライトの当たらないヒロインとして立ち回る。
劇場のライブで、もしかしたら誰かが見つけてくれるかもと普段より大きく手を振ってみる。けれど誰とも目は合わなかった。それがちょっと悲しくて、自棄を起こしていつもより大きな声で歌った。
真ん中でキラキラ輝いている彼女が羨ましくて、話を振られないのをいいことにそこに立つ自分をぼーっと妄想するけど、上手くイメージできなくて、「あぁやっぱり、私はあそこにいるべきじゃないんだなぁ」なんて諦めみたいな感情を抱く。
輝く自分をイメージできない自分がすごく嫌で、でも無理矢理想像したものに価値も見いだせなくて、やきもきする感情をグッと抑えつける。
自分の人気のなさを誰かのせいにしたことは一度たりともないと断言出来るが、誰かのせいにしてしまいたいと思ったことは何度かある。
けれど恵まれたことに一握りの応援してくれるひとは存在するのだ。そしてその数少ないファンは結構熱狂的だったりもする。人気はないし、周りと比べたら見てくれるひとも少ないけれど、誰一人として見てくれていないわけではないと私は知っている。
今の私のファンは私のことをどう思っているのだろう? 人気ないなぁと思いながら推してくれているのかな。それはそれで不甲斐ないし申し訳ない。たぶん、テコナさんのファンは胸を張って「左王テコナのファンです」って言えるんだろう。私も、もっと胸を張って「神山ロッテを推しています」って言ってもらえる存在になりたいな。
アイドル神山ロッテとしてエンドロールを迎えたとき、一番最初に名前がのるような存在であれたならどれだけ幸せだろうか。その瞬間までに私は、スポットライトの当たる自分を想像できるようになれるかな。
今日もアイドル神山ロッテにスポットライトは当たらない。夢や妄想の中でさえも。
それでも私は舞台に立ち、歌い踊る。それがアイドルである自分を愛するための最低限の生き方だから。