終わりまで続く未来

 二〇〇六年八月十日。雲一つない黄昏時の空には沈みゆく燃えるような夕陽と早くも顔を覗かせた小さく瞬く星屑が静かに輝いてる。

 山吹色が広がるひまわり畑の中、白いワンピースの裾を夏のそよ風で揺らす二人の女性はどの花にも劣らない眩しい笑みを浮かべながら繋いだ手を強く握りあった。

 二人にとっては繋いだ手で互いの存在を証明できることがなによりも大切なことだった。

 女性はこの上ない笑みを浮かべるもう一人の女性を視界の真ん中に収めると同じように微笑んだ。山吹色の世界で二人だけの時間がゆっくりと流れる。

 終わりを理解し、悠久を望んだりなんてしない。ただ終焉が訪れるそのときに二人一緒に星空を見上げられる結末を夢見て、その瞬間まで共に息をする。

 太陽が沈み月が昇り空が藍色に染まる。より一層輝き出す星屑の間を一筋の閃光が流れた。

〝終わりを迎えるそのときまであなたと一緒にいられますように〟

 星が描く軌跡がたとえ見えなくても、彼女達はそれを願い続ける。

 終わりを迎えるそのとき、その人生が素敵な運命に溢れていたと思えるよう今日も二人はお互いのために生きる。どちらかが死んだそのときに後悔しないように。

 野に咲くひまわり達は瞬く星屑を見上げる。普段は太陽を欲する花達も今は星のきらめきに見惚れている。

 星屑は永遠に輝かない。ひまわりはじきに枯れる。けれどまた出会ったそのときに何度でも恋の続きをする。今ひまわり畑で再び運命と未来を誓い合う二人のように。


水銀の沼~星屑に夢を抱くひまわり    了

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